映画の主役になった、トランプ以上にアメリカ大統領に固執した人物

映画
映画『フロントランナー』予告2(2019年2月1日公開)

ヒュー・ジャックマンが挑む”文春砲”政治家

21日から公開されたヒュー・ジャックマン主演映画「フロントランナー」。1988年のアメリカ大統領選挙の民主党候補者ゲイリー・ハートは、40歳代という若さもありケネディの再来と騒がれた男だ。この作品は、彼の不倫騒動で立候補辞退するまでを描いている。

ゲイリー・ハートは政治手腕においては申し分のない実力があったため、当時のアメリカではマスコミを巻き込む大騒動となった。ゲイリー・ハートという名前は私たち日本人には馴染みがないが、当時のアメリカで知らぬ人はいなかったであろう。今でいう文春砲で転落した政治家だ。

最近では不倫報道で辞職した宮崎健介という政治家がいたが、大統領候補なのだから、その比ではないことは明らかだ。暴いたのは大手のマスコミではなく、地方紙であった。取材対象の追い方が、パパラッチ的で面白い。このような報道が政治家の進退を問うものとなった初めてのケースだったようだ。

映画の登場人物、彼を取り巻く家族、スタッフ、記者たち、また不倫相手など様々な人たちの視点を通してストーリーは進んでいく。

大統領候補の転落ぶりをハリウッドの人気俳優ヒュー・ジャックマンがどう演じるのか、興味深かった。

ゲイリー・ハートによく似せたメイクで、最有力のフロントランナーとして意気揚々とした姿から、マスコミ・世間から攻撃され、候補を辞退するまでの苦悩・落胆・失望に到るまで立派な嫌われ者になりきった。「レ・ミゼラブル」や「グレイテスト・ショーマン」など、世界を魅了するミュージカルスター・ヒュー・ジャックマンの新たな魅力が感じられた。

一人の政治家のスキャンダルを追うだけではなく、この映画は報道のあり方を問うものだと言われている。これは常に語られるテーマでもある。不倫報道で失職する是非、プライバシーや公私の区別など、答えはなかなか出ない問題だ。まず「フロントランナー」が問題提起できる作品なのかどうか考えるのも面白いと思った。

「JFK」を継いだ「LBJ」という強運の男

「JFK」がケネディ大統領だということは多くの人が分かるだろうが、「LBJ」と聞いてジョンソン大統領のことだと分かる人はどれほどいるだろうか。

そのジョンソン大統領を描いた映画「LBJケネディの意志を継いだ男」が昨年10月公開された。物語はケネディ暗殺の日から始まるが、ケネディが大統領になる以前も描かれれている。

ジョンソンは大統領候補になれなかったが、ケネディから副大統領候補を指名される。ケネディの弟とジョンソンの確執など、ケネディファミリーとジョンソンの関係が興味深く描かれている。

ジョンソンにとってケネディからの副大統領候補の申し出はうれしい電話であった。年配であるジョンソンがケネディの後ろ盾となり、ともすれば閑職とも言える副大統領職を受けるのは、ジョンソンならではの計算があったのだ。

それが自分の思惑以上に、ケネディ暗殺事件が起き、喉から手が出るほど願っていた大統領のイスが舞い込んで来るのだ。あまりに手早い就任式やホワイトハウス入りなどケネディ家が口を出す間もなく、ぬかりなく大統領の座を固めていく。予想外の事件で選挙を経ずして大統領の職を手に入れたのだから、強運の持ち主である。

映画のタイトルに「ケネディの意志を継いだ男」とあるが、その意志は映画では非常に高潔に描かれる。テキサスいわゆる南部出身の大統領が、公民権をかかげた政策を打ち出すのだ。ケネディの意志と言えば、誰も異を唱えられない弔い合戦となる。ベトナム戦争の泥沼化はその意志の1つであったが、これがジョンソンの命取りとなる。

この映画は、影の薄いジョンソン大統領に光を当て、彼の人となりを描いたところが秀逸だ。負け犬から這い上がった男の逆転劇、運命に翻弄されながらも自分をアピールするしたたかさなど、普通の人からすれば親近感すら感じられる。

LBJ ケネディの意志を継いだ男」の監督はロブ・ライナーだ。「スタンド・バイ・ミー」「最高の人生の見つけ方」などヒューマン路線では定評のある監督だ。

3月公開の「記者たち 衝撃と畏怖の真実」はイラク戦争の真実に迫り、当時の政権批判を込めた力作で、監督自らが重要な役で出演もしている。

先日、この作品の宣伝のために来日したライナー監督は「映画を見に来てくれた人が、その2時間近い時間を決して無駄にさせないような作品を作ること、これが信条だ」と語っていた。

自分の監督作品に自信があるのだろう。こんな気概と自信を持って映画に取り組んでいる監督たちがどれほどいるのか。こちらもしっかり見なければいけないな、と思う。

世界最大の大国を率いるアメリカ大統領は、映画の恰好のテーマであることは間違いない。オバマやトランプをモチーフにした映画を見る日も遠くはないだろう。

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