アカデミー賞の前哨戦と言われる、ゴールデン・グローブ賞ノミネーションが昨日アメリカで発表された。
興行収入を左右するので、映画業界はこの頃から賞レースの話題で持ち切りだ。
注目は、年末に公開するレディー・ガガ主演の「アリー/スター誕生」。
日本勢は、カンヌでパルムドールを受賞した「万引き家族」がノミネートされた。
外国語映画賞を獲得すべく、配給会社や製作陣はアメリカに乗り込んでロビー活動に励んでいることだろう。
「万引き家族」に出演した樹木希林。2018年公開作品はすべてヒットした。
類稀な大女優・樹木希林を失った喪失感が多くのファンを劇場に向かわせたのだと思う。
生前は自身の出演作の宣伝のみならず、洋画のイベントにも引っ張りだこで、彼女にお世話になった映画関係者の数は計り知れない。
私もあるイベントの登壇依頼をFAXで送り、何日かして、ご本人から電話を頂いたのには驚いた。
噂通りマネージャーがおらず、すべて、ご自身でスケジュールを管理していた。
インタビューで「ギャラ交渉が面白い」と言っていたが、相手は大女優、こちらは冷や汗ものだった。
仕事を選んだり、その仕事の価値を判断して、自分でギャラを交渉するのは、かなりの作業量だ。
役者・演者・タレントとして、場面場面に集中力を保つのも大変なのに、加えて、いわばスケジュールやギャラ交渉という”雑務”もこなすのは、すごい能力だと思う。
イベント当日、ご自身が運転する自動車で会場に到着。お迎えに上がった私に手を振りながら名前を呼んで話しかけて下さった。
緊張する私に「眉間にしわが寄っているわよ」などと茶化して私の顔を触って場を和ませてくれ、映画の宣伝用のチラシや新聞記事のコメントをどう掲載したらいいのか熱心に考えて下さった。
「出来上がったものを送りますか」と尋ねると、「あ~いらない、いらない。物は増やさないようにしているの」
人に迷惑をかけず、やれることはすべて自分でやる、そして必要なものは持たない。
このことを長い間心がけていらっしゃったのだなと感心したものだ。
彼女を悪く言う業界人がいないのは、有名人のおごりがなく、一般人の常識が備わっているからだと思う。
あの個性的で自然な演技は、誰もが認める。海外の賞レースに加え、日本アカデミー賞でも賛辞があるだろう。
スクリーンに映る樹木希林だけでなく、素顔の彼女と触れ合うことができたのは私の心の中の誇りでもある。合掌。
コメント