カルロス・ゴーンが約50億円の報酬隠しで逮捕された本質的意味

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日産自動車を再建した世界的経営者・カルロス・ゴーン会長が東京地検特捜部に逮捕された。容疑は有価証券報告書に自分の報酬を約50億円も過少に記載した疑いだ。隠した金額は桁違いなだけに、メディアは一斉に報じ、世界に大きな驚きを与えた。

特捜部の発表では、ゴーン会長は2010年度から5年度分の合計報酬が実際は約99億9800万円にもかかわらず、約49億8700万円に過少に記載した疑いがあるということだ。容疑通りだとすると、報酬の半分を隠していたことになる。

しかも、日産の社内調査で、海外子会社に自宅として高級マンションや住宅を買わせていたことも判明し、私的流用の疑惑も浮上している。この子会社がブラジル・リオデジャネイロやレバノン・ベイルート、フランス・パリ、オランダ・アムステルダムに住宅を購入し、購入費や改築費、維持費として数十億円が支払われたという。

メディアにカリスマ経営者ともてはやされ、誰も異論を言えない存在になっていたとしても、まさにやりたい放題である。しかし、社内の内部通報と今年6月施行された司法取引が事態を一変させた。

これまでの報道を見る限り、ゴーン会長逮捕で、改めて思いを巡らさないといけない点を指摘しておきたい。

ゴーン会長は、経営危機に陥った日産と資本提携したルノーから派遣され、1999年に最高執行責任者、2000年に社長、2001年には社長兼CEOと順調に実権を握った。その過程で、大リストラを実行し、「コストカッター」「コストキラー」と呼ばれた。

ゴーン会長が入社した当時の日産は、国内販売46モデル中、収益をあげているのは3モデルだけ、約2兆円の有利子負債を抱えて青色吐息の状態だった。ゴーン会長の主導でルノーとの間でプラットフォームやエンジン、トランスミッションなど部品の共通化や共同仕入れでコストダウンに取り組んだ。

一方で、東京・武蔵村山市にあった日産・村山工場など生産拠点を閉鎖し、従業員の14%にあたる2万1000人を目標とした人員削減に取り組んだ。自らテレビCMに出演したほか、報道番組のインタビューにも応じて積極的にメディアに露出し、「コストカッター」は一躍人気者になった。

日産を再建したゴーン会長の報酬は桁違いだった。役員報酬の開示制度が始まった2009年度に日産から受け取った報酬は8億9100万円、その後も毎年10億円前後で、高額報酬を批判され続けた。今年6月の日産の株主総会では43%がゴーン会長の報酬案に反対した。

フランス・ルノーでも同じだ。2年前の株主総会では、約9億4千万円の報酬案に54%が反対した。ルノーの筆頭株主・フランス政府が反対票を投じたとされ、日仏で沸き起こる報酬批判にゴーン会長も何らかの対策を迫られていたことは容易に想像できる。

ゴーン会長の高額報酬は、元をただせば、日産の将来を願ってリストラを受け入れた従業員たちの犠牲の元に生まれた報酬だともいえる。

ゴーン会長だからこそ、日本人経営者には実行できないような冷徹なリストラを実行できたともいえるが、一方で桁違いの報酬をもらい、加えて、批判を恐れて50億円もの報酬を隠し続けたとすれば、リストラを受け入れた従業員たちは、いま、何を思うのだろうか。

20年近い過去の悲惨な光景が思い出されるのである。

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